おはようございます。昨日は期待の告知の中でその理由は具体性が求められると申し上げました。今日はちょっとセールスマンの教育の話になりますが「人を褒めることの効果と難しさ」についてお話しします。セールス現場以外でのコミュニケーションでも参考になると思いますのでお付き合い下さいね。

どの業界でもセールスの新人に対しては営業教育があると思います。座学もあれば先輩のセールス現場に同行して勉強するいわゆる「ジョイントワーク」もあると思いますが、色々なシーンで気を付けるポイントなどがレクチャーされるわけです。そしてその中で必ず伝えられるポイントに「相手を褒める」という行為があります。私の前職の保険会社の教育でもこのポイントは必ずありました。私の感覚値ですが恐らくセールス現場の9割以上で良いとされている行為です。

しかしこの「相手を褒める」という行為は諸刃の剣なのです。効果的に用いれば確かにセールスに良い効果はあるのですが、使い方を誤るとその場で相手の心のシャッターが下りてしまいセールス活動が終了してしまうという危険をはらんだ行為なのです。ルートセールスの様に定期的に訪問する間柄であればまだしも、保険の様に初めての顧客に接するセールススタイルの場合は本当に細心の注意を払って相手を褒めないと、ほとんどの場合逆効果に働きます。この危険性を考えるとおよそ新人に奨められる技術ではありませんが、未だにほとんどの営業教育現場ではこの危険性について認識されないまま「相手を褒めましょう」と教えられています。

では、何故相手を褒める行為が危険なのでしょうか?以前のブログでの「同質か異質か」というテーマの中である程度詳しく触れましたが、顧客は営業マンの表面的なセールストークのみによって購買を決めるわけではありません。有名なメラビアンの法則などでも触れていますが、表情や声なども重要な決定ファクターなのです。セールストークが「意識」であれば表情や声等は「無意識」です。そして怖い事に意識よりも無意識の判断の方がはるかに決定権を持っています(無意識の為その事実に顧客自身も気が付いていませんが)。

さて、ではこの「相手を褒める」という行為の無意識領域を見てみます。本当に相手の発言内容などが素晴らしいと思っている場合のセールスマンの無意識は「ビックリ!感動!」等ですからこれは相手にきちんと伝わります。ではセールス教育で教えられているいわゆるセールストークでの「相手を褒める」行為の無意識はどうなっているのでしょうか? ここでの無意識領域は本人も意識していないセールスの本音が顔を出します。つまり「相手を褒める⇒相手が気持ち良くなる(少なくとも嫌な気持ちはしないであろう)⇒セールスが成功する確率が高くなる(嫌われなくて済む)⇒これを活用して売り込もう!」

こんな感じです。「そんな風には思っていない!」というセールスマンの怒りが聞こえてきそうですが、それはそうです。だって無意識ですから(笑)。顧客の発言に素直に感動した場合以外のいわゆる「狙った褒め」にはこのような売り手の本音が隠されています。トップセールスマンはこの狙いを悟られない様に褒めるのが上手なのです。しかし新人にはその様な術等なくそのデメリットを考えたら、この方法は上級手段として当面はお控えいただいた方がよろしいかと思っています。

では、このような危険性を避け、効果的に相手に「期待を告げる」にはどうしたら良いのでしょうか? 明日ご説明いたします。