おはようございます。昨日はエピソードの収集について述べました。その際「記憶ではなく記録する」と述べて終了しました。今日はその辺の話をしたいと思います。私もセールスマネージャー時代経験があるのですが、日々のやり取りやエピソードはついつい記憶に頼りがちになってしまいますよね。ただでさえ忙しい日々の中、何気ない(少なくともその時はそう思ってしまいます)エピソードをいちいち記録する手間を惜しむのです。ところが記憶というものは、どうしても月日が経っていくうちに曖昧になります。「いつ、どこで、誰が、何を発言して、何を行ったか」等について時と共に少しづつ曖昧になっていきます。結果、後日のフィードバックの際には「確か○○頃、○○辺りで、こんな感じの事を....」といったような発言になります。しかし記録しておけば例えば半年後の面談の際にもあたかも当日収集したかのような具体性を持ってその情報を本人に伝えることができるのです。そして逆に時が経過するほどそのエピソードの具体性によって相手の驚愕度が上がり、感動に繋がっていくのです。

私が前職の保険会社の新人時代だった頃の話ですが、当時営業社員は全国で約2,000人。本社の入社式で少しだけ会話をした専務がその一年後支社訪問で私の在籍する支社に来訪しました。私は当然その専務の事は覚えていますが、相手からしたら私は2000分の1の存在に過ぎません。覚えているはずもありません。ミーティング開始前フロアに入ってきた専務は、支社の先輩方と楽しそうに談笑しています。「あ~この会社は役員と現場の距離が近いんだな~。私も早く実績を出して覚えてもらうようになりたいな~」とそのやりとりを眺めていました。

ところがミーティングが始まって専務の講話の時間になり彼が話始めると私はある事に気が付きました。支社のメンバーに話を振りながら自身の話を進めていくスタイルなのですが、メモもないのにとにかくメンバーの名前を憶えているのです。「例えばこんなことを本社は考えているんだが、◆◆!お前どう思う?」という風に呼び捨てで本人を指して意見を求めます。「すごい能力だな~」と感心していた矢先「これについては…お!石川!1年ぶりだな。お前ビール会社ではこの辺りの事はどうだったんだ?」と私に意見を振られたのです。その時の意見の内容ははっきり言うとどうでもよくて、もうすっかり忘れてしまいました(笑)。そんな事よりも入社式でしか会っていない一新人であった私の顔と名前とおまけに前職情報まで覚えてくれていたことがとにかく嬉しくて嬉しくて…この短いたった一回のやり取りだけでこの会社と専務の事が大好きになってしまったのです。

しかし、後日何となく種明かし的なものを噂で聞いたのですが、どうやら支社訪問の直前にその支社のメンバーの顔写真をみて名前やエピソードの確認をしていたらしいのです。「そりゃそうだよな~」と納得はしたものの彼に対する好感度は全く下がりませんでした。むしろ、こういう一つの準備が相手を感動させるくらいの力を持っているのだという事をこの時に学んだのです。

さて、期待を告げる根拠に戻りますが、本人に期待を告げる際のその理由・根拠は具体的な事実であればあるほど説得力・納得感が増します。ここが曖昧で自身の主観が占める割合が大きいと、期待を告げる効果の効果は半減し、逆効果になる場合すらあります。それはその期待がお世辞(ヨイショ)と取られてしまう恐れがあるからです。明日以降その伝え方の違いなどについてご説明していきます。