少し時間が空きましたが再開いたします。フェーズ1をクリアする事がとても大事である旨の内容を私自身のお恥ずかしい経験談も交えてお話ししました。フェーズ1をクリアするとはどういうことか?それはすなわち「自分はフェーズ1にいる」事を自覚する事になります。

 繰り返しになりますがフェーズ1とは「(正しく)意識出来ていないから出来ない」というレベルゾーンになりますので「自分の思っていた正解のイメージは実は違っていたんだ!」、あるいは「自分の演奏は模範演奏と比べると合っていない!」といったように「自分の認識や演奏が正解とは違っていた!」と自覚する事がゴールになるのです。

 ですのでこのフェーズで大事なキーワードは【気付き】です。正解に気付く事。そしてその正解と自身の差に気付く事。ここで大事な事は「正解と自分は何がどう違っているのか?」を正しく具体的に理解する事です。ここさえクリアできればもうフェーズ2に進むことが出来ます。

 さて、ではどのような練習が効果的な【気付き】を得る上で有効なのでしょうか? 私は迷いなく「勉強会」を挙げます。

 よく、合奏やパート練習の場面で「自分の音をもっと聞きなさい」とか「他の人の音にもっと注意して」といった指導をしているのを見かけます。そして繰り返し吹かせてはその都度注意するという事を何回となく繰り返すのですが、これは実はとてもハードルの高い要求なのです。習熟度が低い奏者程このハードルはどんどん高いものになり、その効果の実現は難しくなります。何故でしょうか?

 ここでのハードルの高さは【演奏をしながら同時に他の意識をプラスする事】を要求しているところにあります。当たり前の話ですが人間は同時に2つの事を意識出来ません。一方を強く意識するともう一方の意識は疎かになります。上記の要求にこたえられる例は、少なくともその旋律をほぼ無意識状態で自然に演奏できるレベル(フェーズ4)の奏者が、注意を受けた意識をプラスするというケースに限られます。それ以下のレベルの奏者に関してはこの要求の実現は不可能です。何故でしょうか?違う意識をプラスする余裕がないからです。そちらの意識をしようとした途端現在の意識が疎かになり音を間違ったり、タイミングが大幅にズレたりというように正しい演奏が出来なくなるのが本能的に判っているのです。ですから「他の人の音を聴きなさい」と言われて「はい」と答えたものの、いざ演奏に入ると自分の演奏に必死なので、言われた意識には一切向かいません。そんな余裕はないのです。

 誤解無き様申し上げますが、演奏しながら他の奏者や自身の音を意識するという事はアンサンブルにおいては必要な事です。しかしそれは少なくともごく自然にその旋律を演奏することが出来るレベルの奏者の次のステップだという事です。

 このように演奏をしながら他の事を意識するのはとてもレベルの高い事であり同時にハードルも高いものとなります。しかし、「演奏をしながら」を抜いたらそのプラスしたい意識に対する理解度や成長はどうなるでしょうか?

 ここに勉強会開催の意義があるのです。明日以降に続きます。