ご無沙汰をしております。目まぐるしく変化する環境の中、ついついブログがご無沙汰になってしまっておりました。大分期間が空いてしまいましたがとりあえず再開していきたいと思います。

 前回はクローズドクエスチョンを用いた合奏内での思考回路の活性化の一つの例を提示しました。今回は個人面談のシチュエーションに戻ります。そもそも個人面談の目的の2つ目である「自分の頭で考えさせること」がテーマでしたが、その為には陥りがちな「思考停止状態」を打破すること。そしてそのための有効な手段として2つの質問の技術をご紹介していきました。

 前回までの例を踏襲して個人面談に当てはめますと、普段自身の頭で考え・自身の言葉で考えを述べることに不慣れな生徒さん達との面談に際しては、下記のような準備・手順で進められると良いのではないでしょうか?

 1:個人面談の実施予定日時と共に予め質問する項目を示し、発表しておきます。例えば「この半年間の自己の評価(演奏技術面・生活態度面)は100点満点中何点か?」、又「この半年の目標は何か(技術面と生活面)?」等々…これにより生徒さんによっては予め考え答えを準備して面談に臨むはずです。その場で何となく考え、ふわっとした答えをする生徒さんと、しっかり考えてきた生徒さんの回答の中味の濃さの違いに気付かれると思います。

 2:しかし、本番はこれからです。例えば半年間の自己評価を「技術面50点・生活態度面で70点」と答えた生徒さんがいたとします。ここからいよいよ「質問の深掘りによる思考回路の活性化」のシーンに入ります。ここは質問者の技術の見せどころです。しかし、繰り返しになりますが最も大事なことは面談相手である生徒さんが「委縮せず、オープンな気持ちで考えたことを伝えてくれる」雰囲気を作ることです。

 3:自己評価と原因の追究の為の質問の例を挙げていきます。悪い流れの例を先に挙げますとこんな感じです。  「どうして50点の自己評価なの?」→「「〇〇も出来てませんし、▲▲もまだまだダメなので」→「どうして〇〇や▲▲は出来なかったの?」→「努力が足りないと思います」→「解決するために先輩や先生に訊いてみたりした?」→「すいません。訊いてません」…..

 4:いかがでしょう?この国の文化なのか?クラッシック音楽の文化なのか(合奏で悪いところを指揮者が演奏者に指摘するという練習文化)?はたまた昨今の特徴なのかはわかりませんが、とにかく生徒さんは自らの「足りないところ・悪いところ」を列挙してくると思います。その出た意見だけを取り上げて原因の追究をしていきますと、上記の様に先生が生徒さんを追求し責めているといった構図に結果的になってしまいます。こうなってしまいますと生徒さんは自らのマイナス意見に端を発し、その原因を先生に追及されたことにより完全に委縮してしまいます。

 5:それでは、どのように進めていくのが良いのでしょうか?あくまでも一つの例ですがご参考になればと思います。 「技術点の自己評価が50点なんだ? 少し厳しい採点のような気もするけど。とりあえず50点という事は【上手になった項目・成長した項目】もあれば【まだ課題が残る項目】もあるという事だよね?」→「はい」→「OK。ではまず自分なりに【ここは頑張れたな~。成長したな~】という所から是非教えて?」→「…..(考えた後)□□の技術は半年前から比べると少し上手くなったように思います」→「□□だね?確かに私も賛成だね。半年間で◆◆さんの□□の技術は本当に上達したと思うよ。どうして上達できたのかその要因を教えてくれる?」→「…(考えた後)練習時間の中で比較的□□を意識して練習時間を割いたからだと思います。」→「なるほど意識的に時間を割いて集中して練習するのはとても効果的な事だよね?その意味ではその作戦は成功だったね!」→「はい」→「でも、ただ時間を割けば上達するってわけでもないよね?多分技術的に乗り越えた何か、【つかんだ技術的なコツ】みたいなものがあると思うんだけどどうだろう?」→「…(考え中。辛抱強く待ちましょう)3か月前講師の先生に呼吸法を教えてもらった時から少し呼吸法を変えて練習したのが良かったと思います」→「あの時のレッスンがきっかけだったんだ。それは良い機会になったね!そのつかんだコツについて後輩他達に教えてあげる事は出来る?」→「はい、大丈夫です」→「それは頼もしい!よろしく頼むね!」→「はい、わかりました!」→「OK,まだ上達した項目はあるでしょう?他に教えて?」→「….(考え中)」

 6:いかがでしょう?生徒さんからは最初のうちは謙遜して中々プラスの自己評価の項目は出てこないと思いますが、必ずプラス材料はあるはずです。それを自ら言わせ、その評価について同意し、褒めその要因を分析する、という作業がまず必要です。これにより過大な謙遜による思考停止から脱却し「良いものは良い。足りないものは足りない」という本来当り前のスタンスになります。このスタンスに立った後に【課題が残る項目】の質問にいきますが、長くなりましたので次回に持ち越します!