おはようございます。前回は思考停止から脱却するためには質問を投げかけることが有効であること。そしてその質問のタイプはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2種類があり、それぞれの特徴をご紹介しました。その中でオープンクエスチョンは回答者の思考回路を回すには理想的な質問であるものの、相手が答えにくいといったデメリットがあることをご紹介しました。ましてや普段思考の習慣がない生徒さんの場合はいきなりのオープンクエスチョンはハードルが高いということを述べて内容を締めさせて頂きました。

さて、ではどのように質問するかという事ですが、まず【思考し→臆せず→発言する】という習慣が出来るまではクローズドクエスチョンを繰り返しましょう。そしてその際のポイントはざっと下記の3点です。

①(最初のうちは特に)いきなり質問するのでなく、次の演奏後に質問する旨を予告して考える準備を与える

②質問内容と選択肢を具体化し、「手を上げない」という逃げ場を与えないこと →必ずどれかにあてはまるという選択肢を設定してあげる

③(一番大事!)間違っても大丈夫!恥ずかしくない!という事を重ねて伝え手を上げやすい雰囲気を作る事!

では具体的な例ですが、ある楽曲のフレーズの合奏でのアインザッツ(出だしが揃っているか否か)がどうだったかという事を例にとってご紹介します。

◆この部分のアインザッツがどうだったか演奏後に質問するので、よく聞いて演奏してくださいね(質問予告) →演奏実施

◆どうだった? 該当する所に手を上げて下さいね。1:完全に揃っていた。2:完全ではないが概ね揃っており合格点 3:ズレている。4:わからない→(最初に選択肢を告げ、どれかには必ず該当し手を上げる事を認識させる)

◆1から順に訊いて挙手させる(リラックスさせ手を上げやすい雰囲気に!)

少し面倒ですがこういった手間をかけることで「考える」という事の他に「演奏しながら他の奏者達の音を聴く」という習慣も出来始めます。予告なしで演奏終了後にいきなり質問されてもそもそも上記の習慣が出来ていない生徒さん達はせいぜい自身の演奏に必死で「全体を聴く」そして「自分と全体の調和がどうなっているか認識する」といった習慣がありませんから、答えられません。ところが予告した上で演奏をすると質問に対して挙手しなければなりませんから必然的に考え耳を働かせながら演奏をするはずです。こうして普段使わない脳の回路が開いていくことで生徒さんたちの演奏者としての聴力(実際は脳の回路)が飛躍的に成長していきます。

合奏において、その指導内容の中でタテ(アインザッツ)とヨコ(音程)が占める割合が高ければ高いほどこの能力が上がれば上がるほど短時間で仕上がっていくはずです。最初は上記の例のような簡単な答え易い質問で良いと思います。慣れてきたら上記の質問の続きを詳しくしていくと更に生徒さんの回路は開いていくと思います。例えば1:打楽器が早かった、2:金管楽器が早かった、3:木管楽器が早かった、4:わからない  などなど

こういった新しい回路・習慣が生徒さんにできてくると恐らく1か月もかからずに合奏の雰囲気、生徒さんの反応、そして練習効率などが変化してくると思います。是非お試しください!