会話のキャッチボール技術の最初は「傾聴」です。これはカウンセリングや心理学の世界ではメジャーな技術ですが、相手の話をじっくりと聞くシーンになりますので初対面ではあまり使うシーンは無いかもしれません。しかし例えば生徒さんの悩みや本音をじっくり聞く場合等にはとても有効な技術です。
まず質問ですが皆さん会話相手の話は最後まで聞いていますでしょうか?恐らくほとんどの方が「Yes」という答えではないかと思いますが、敢えてお聞きします。「本当ですか?」
といいますのは、以前ご紹介しました会話の心地よいテンポというものがあります。多くの場合相手の話の5~8割方を聞いた段階で既に会話の全体を推測し、それに対する自分の言いたいことを考え準備しています。特に会話テンポが速く思考回路も早い方は相手の会話の終盤既に自分の言いたいことが決まっており、言いたくてウズウズしています。会話のテンポは大事ですがこの「傾聴」では我慢が必要です。傾聴はあくまでも「相手に100%共感する。100%受け入れる」という気持ちでじっくり聞くという行為です。
例えば私(上司)と会話相手(部下)でこんなやり取りがあったとします。
1:私「どうした?元気ないね?」
2:部下「いや、ちょっと最近家の方で問題があって」
3:私「どうした?」
4:部下「いや、実はここ最近妻とうまくいってないんです」
5:私「それは大変だね。良かったら詳しく聞かせて」
このやり取りの中で2と4の後の私の切り返すタイミングが早かったとしたらどのように感じますでしょうか?2と4は少なくとも深刻な事を打ち明けています。テンポよくすぐに切り返すことは「あまり考えていない→あまり興味がない→うわべだけの「大変だね」に聞こえる」と無意識につながっていきます。自分の中でその言葉を充分時間をかけて呑み込んだ後で同じように返すだけで印象は正反対になります。
この傾聴の効果は会話相手が自分に対し「自分の全てを受け入れてくれている。本音を言っても反対されない。」と安心し心を開いてくれる事につながります。
多くの方は話題によってこの切り返すテンポは無意識に変えているはずです。しかし意識的にそのテンポを操作することによってより効果的に相手の信頼感を得られます。相手の話を頷きながら辛抱強く最後まで聞き、すぐ切り返すのを我慢し自分の心に浸み込ませたのちにそれに対しての切り返しをします。そして大事なことは必ず「肯定」フレーズから入るという事です。自分の意見は否定だとしてもです。100%まずは受け入れるという事が大事です。それでも自分自身の意見を伝える必要がある場合は本でも触れましたが「Yes-But」法を使用します。これについては次回ご紹介しますね。