おはようございます。昨日は最後因数分解について触れました。因数分解とは何でしょうか?今日はその概略をご説明致します。

以前もご紹介しましたが私のコーチングの師匠である吉武永賀さんは良く仰っていました。それは「結果が出ない指導者は物事をカタマリで見ている」というものです。「カタマリで見ている」とはどういう事でしょうか?

例えば100M走のアスリートの場合で考えましょう。その選手は中盤から後半のフォームやタイムは問題ないのですが、スタートが苦手で全体タイムが伸び悩んでいるとします。この選手のタイムを上げるためにスタートからゴールまでの100Mの通し練習を何回も繰り返す練習は効果が上がるでしょうか?

答えはもちろん「NO」だと思います。問題ない中盤以降も走らせてスタミナや集中力を消耗する必要は無いと考えられますよね。結果そうするとスタートから2~30Mを繰り返し練習した方が効率の良い練習となります。本人の集中力もその方が冴えているはずです。100M走のスタートからゴールを「因数分解」することによってそのウィークポイントを見つけ出せ、それによってそこだけを集中的に練習するという効率的な練習が可能になるのです。

しかし、因数分解はそれで終わりではありません。もっと分解が可能なのです。タイムを計測した結果「スタートから序盤のタイムが遅い」事で上記の問題を把握できました。今度は序盤だけに注目して観察すると更に分解が出来てきます。「スタートの合図から反応するまで」の区間、「反応してから一歩踏み出すまで」の区間、又は「踏み出してから序盤のペースを作る加速」の区間といったように更に細かく動作や時間を分解することが出来ます。そしてその原因の究明と改善の練習方法に着手することが出来るのです。

その中で、最終的に「スタート合図から反応までの区間」がウィークポイントであったといった場合等は、例えば誰かに合図をしてもらいその瞬間対象の部位の筋肉を意識する。といったようなイメージトレーニングを取り入れる事も可能です。これであれば毎回走る必要はありませんから過度な肉体的疲労は防げます。又工夫次第で自由な時間で練習(イメトレ)可能という利点もあります。いずれにしても100Mを何回も繰り返し走るだけの練習よりは、はるかにウィークポイントの克服に繋がるでしょう。

セールスの世界もアスリートからするとまだ遅れていますが、この因数分解は広まりつつあります。単純に販売成績が「良い」、「悪い」ではなく何故良い(悪い)のか販売プロセスを分解して「プロセス移行率」を算出します。そしてウィークポイントになっているプロセスについてトレーニングをしていくのです。

さて、吹奏楽の世界はどうでしょうか?もともと音楽という芸術分野ですのでこういった因数分解とは水と油の世界であったかもしれません。しかも陸上には「タイム」があります。セールスには「販売成績」があります。いずれも数値化できるゴールがあるのです。これに対し吹奏楽、或いは音楽というものは「数値化出来るゴール」がありません。これは何を意味するのでしょうか?

それは「ゴール達成度の判断はそれぞれの人の主観に委ねられる」事を意味します。よく吹奏楽コンクールの当日の審査結果について疑問を持つネットの意見なども目にしますが、こればかりは審査員の主観に委ねられているわけですから仕方がありません。共通の数値化できるゴールが無い故の現象です。

それではそんな中でどのように因数分解を捉えていくのでしょうか?明日以降に続きます。