昨日は強豪校と一般の学校の違いは何か?という事について原因の一つにコンフォートゾーンを挙げました。では強豪校の吹奏楽部に入部すると同じ初心者でもどうして上達が早いのでしょうか?

まず上級生である2、3年生は全国大会を経験してますから当然楽器の技術は上手です。例えばトランペットであれば発音の正確さや音域、ダイナミクス等、クラリネットであれば音色、フィンガリング等恐らくどれをとっても平均の中学生と比べると高いレベルにあるはずです。しかし入学してきた初心者の一年生はその先輩方しか知りません。その先輩方の音色を聴いて無意識に自分の音色と比較し、フィンガリング速度を目の当たりにして自身の目標にして練習します。音程なども上級生は正確ですので自分が外れているととても目立ちます。たとえ中学1年生といえども、すぐに自身の出している音程に注意を払えるようになります。

この様に新入生はこの部活の雰囲気に馴染みたい。同化したいと無意識に思います。正にこの部活の場がコンフォートゾーンになっていく始まりです。「新しい団体に入ったら、そこで馴染んでいきたい」ということは何も人間関係だけではありません。楽器の技術なども「自分だけこの団体の中で突出して下手である⇒自分だけこの団体の中で目立って異質である」事に無意識にとても不快感を覚えます。そして自然に上級生と同じようになれる様にコントロールしていくのです。この無意識のコントロールのレベルの差こそが普通の学校に対して強豪校が強くあり続ける大きな理由です。特に音楽は理屈ではなくイメージで感じ取る部分も大きいため(例えば音色や表現など)、よりコンフォートゾーンの差は開きやすくなります。

どういうことかと言うと、例えば将来一流のバイオリニストになって欲しい親は我が子を幼少期から一流のバイオリニストに師事させます。何故か?それは「バイオリンはこういう音を出せばいいんだ」というとても大事なイメージを一流のものにするためには、何よりも一流の先生の音を本人が聴いて慣れて、そして「それが当たり前だ」と感じる事が一番の近道だからです。理屈ではありません。「百聞は一見(一聴)にしかず」という事です。そしてそれは強豪校の場合も一緒です。きれいな音色を奏でている先輩方と「同化したい、馴染みたい」と無意識に思い不思議と音色も近づいていきます。このようにアドバイスや口頭指導などではない、いわゆる【無言の指導】による成長の割合が多いのが音楽の特徴なのです。

この様に入部した団体を自身の【コンフォートゾーン⇒慣れ親しんだ空間、安心領域】にするためにその団体に自身を馴染ませていきます。人間関係や規律・ルール。その一環として技術も無意識に馴染ませていきます。こうして指導者としてはある程度楽になってくる「伝統校」への文化が出来上がります。これらの現象を私は「ボトムアップ現象」と名付けています。次回はその辺りを簡単にご説明したいと思います。